自然農法の考え方には、
”天地返し”という考えがあります。
皆様は、天地返しというのをご存知でしょうか?
自然農法では、
1)深い耕耘
2)天地返しをするべしとされています。
1) 深い耕耘
深く耕し、肥料の蓄積層を散らし、分散させることです。
2) 天地返し
水田の場合、土質等にもよりますが、
肥料の蓄積層は、土壌表面より約20㎝以上下にあると考えられています。
これを分散させる方法として
土壌を掘り起こし、細かく砕かずに
肥料蓄積層の部分を地表面に出して
日光や、雨風により風化させます。
これを天地返しと言います。
天地返しを行う自然栽培農家 前田 英之さんの場合
自然農法や自然栽培実践者の方でも
天地返しをする人としない人と別れます。
それは
生産者の考え方やその田んぼの土質などにもよります。
自然栽培米農家、前田さんの田んぼは、少し粘土質です。
収穫後の田んぼには、
なるべく多くの空気を入れ込み
”豊かな生態系を田んぼの中で育みたい”
と考えています。
下の写真は
1月頃に行った天地返し前の様子です。
斜めに線が入っているのが分かるでしょうか。
実はこれ
1m の深さの溝を切っているのです。
1m下まで空気を入れるためですね。
いよいよ
天地返し用の特別なアタッチメントをつけて
天地返し開始です!
深さ20-25㎝ほどをひっくり返していく感じです。
20-25㎝下にあった層が表面に表れてくるんですね。
この下にあった層を
地表面に出し、日光に当て、雨風で風化させていきます。
また、表面がボコボコしているので
影などを作り、複雑な環境になるために
生物達も棲みつきやすくなるのだと思います。
(撮影:2013年1月)
前田さんは、天地返しは、土壌を攪乱するので
生物達にとってストレスになり
これが微生物の活力を生むと考えています。
人間と一緒ですね。
良いストレスは、人間を成長させます!
前田さんの田んぼは、少し粘土質なので
そこに空気を入れることで、
生物と土壌が喜ぶ環境を作っているのです。
冬の間、このボコボコした状態で置いておきます。
4月くらいになると、下のような状態になります。
左側が、前田自然栽培米ミナミニシキの田んぼです。
5月~10月の稲を育てる期間では
農薬や肥料を使用しない自然栽培で育て
周りの方と異なった方法で栽培していますが、
11月~4月の稲を栽培していない期間も
周りの方とは、全く異なった管理をしています。
冬の間に天地返しをすることにより
下の地層に空気を入れ込み
地下層を表層に出し、日光や雨風にさらして
凸凹した環境を作ることで
豊かな生態系を築いているのです。
人が喜ぶ食べ物を作るには、
微生物や虫達が喜ぶ環境を作る必要があると考えているのですね。