夏になると、田んぼには
たくさんの虫たちが棲みつきます。
稲には、トンボやテントウムシ
ときにはすずめなどの鳥が。
そして田んぼの水の中には
カエルやドジョウ、タニシ
ヤゴなどが棲みついています。
自然栽培では、虫避けのために薬剤は一切使用しません。
そのため、虫が寄り付きやすい環境にあります。
これらの生き物は自然栽培において
田んぼの中に、バランスの取れた生態系を作り
稲を守る役割があるので、必要な生き物です。
しかし中には、稲穂を吸汁したり
苗を食べたりして食害を及ぼす生き物もいます。
いわゆる害虫と呼ばれている虫たちです。
そして自然栽培では
これらの害虫に対し
どのような虫の対策を行っているのでしょうか。
稲につく虫とはどんな虫なのか
稲につく主な虫に
ウンカやカメムシなどが挙げられます。
中でもウンカは、毎年稲に大きな被害をもたらす虫です。
ウンカ
毎年6月から7月に、アジア大陸から梅雨前線の気流に乗って日本に飛来するウンカ。
稲の茎や葉に、ストロー状の口針を刺して吸汁し、稲を枯らしてしまいます。
セミを小さくしたような形で、体長約4~6㎜と、とても小さい虫です。
日本においてウンカたちは江戸時代から大発生を繰り返してきました。
平成に入ってからは効果の高い薬剤が開発されて広く使われるようになったので
被害を抑えることが可能になりました。
しかし平成17年頃から、薬剤に対して抵抗性がついたウンカが出現しはじめました。
ここ5年ほどは、ウンカの被害が続いているのです。
これらの原因は、飛来の元である中国やベトナム北部で
薬剤が大量に使われていることによります。
最近では、いくつかの薬剤に対して抵抗性が発達していることがわかっています。
カメムシ
カメムシには、多くの仲間がおり
約20種類ものカメムシがいるとされています。
カメムシは、稲の穂が出て硬くなるまでの柔らかい時期に
穂の栄養が吸汁します。
そしてこれにより、黒い斑点がお米に現れます。
全体的に五角形の底を引き伸ばしたような形でをしており
潰すととても臭い匂いを発します。
ミナミニシキを作る前田さんは虫に対して『何もしない』
熊本県玉名市で自然栽培でミナミニシキを作っている前田英之さんに
このような虫に対してどのような対策をしているのか尋ねてみると
「ウンカとか病気がきてもいいよ。
それらの生物がいることで、土壌の菌が豊かになるでしょう」
という、全く予想外の答えが返ってきました。
虫や病気がはびこっても、全く気にしない!と言うのです。
前田さんにとって大事なのは「田んぼの生物の量」とのことでした。
農薬や肥料を使用しないことで、微生物や虫を増やすことが重要であると。
なぜならそのようなお米が腸の微生物によって、良い食べ物となるからです。
私たちの免疫細胞は、腸に集中しています。
これら免疫細胞を活性化させるためには腸内環境を整え
そこに生きる菌たちを元気に腸内に生かすことが大事です。
土壌の中で豊かに棲息している微生物や菌によって育ったお米が
腸の中の菌たちにとって良い栄養源となり、私たちの体を元気にしてくれるのです。
令和元年度の九州の稲作ではウンカが大発生しました。
しかもその後、台風の影響で稲が倒れてしまい
非常に厳しい収穫となりました。
しかし、前田さんの田んぼでは
不思議なことにウンカの被害がなかったのです。
前田さんの田んぼは、無農薬・無肥料のためにたくさんの生物が生息しています。
この多様な生物が田んぼの中に生態系を作り
自然と虫を寄り付けない環境を作りだしているのです。
害虫がきても、害虫の天敵がやってきて
害虫を食べてくれる。
このバランスの取れた自然の生態系により
稲は守られているのです。
このことが、ウンカの被害を
最小限に抑えているのです。
自然栽培米ミナミニシキ作りは令和元年で13年目となりましたが
特に去年は、収穫時にクモやテントウムシが多く見られました。
さらに前田さんは、苗を食べる虫であるジャンボタニシを
除草にも生かす試みも始めています。
害虫もこの地球上に生きている大切な生き物。
自然栽培ならではの考え方であり、お米も自然の産物の一つなのですね。