こんにちは!自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
春のうららかな気候も過ぎ、日中は汗ばむ日差しが降り注ぐ5月。
九州では、稲作において最も重要な播種作業・苗床作業を行います。
熊本県玉名市で無農薬・無肥料のミナミニシキを作る前田さんの田んぼでは、5/7に播種作業を行いました。
播種とは米の種籾をまき、苗を育てること。
苗が20㎝ほどまで育ったら、6月に田植えをします。
例年の熊本の梅雨入りは、6月5日前後。
しかし2021年の梅雨入りは、例年より20日も早い5月15日でした。観測史上2番目という異例の早さです。
作物の生育に欠かせない雨ですが、昨年のような長雨が続くと、稲の品質が低下し収量も減ってしまいます。今年はどうか、お天道様のご機嫌が良いことを願うばかり。
前田さんの令和3年のミナミニシキ作りが、いよいよスタートします!
<目次>
前田さんの播種作業風景
現在の播種作業では、機械を使用して行うのが一般的です。前田さんの播種作業の大まかな流れを説明すると
①機械で育苗箱に山土を入れ→水を入れ→種をまく→覆土
②育苗箱を田んぼに運び、並べる
③育苗箱にネットをかける
①の機械で播種をしている様子です。
②の苗箱を運んでいる様子です。
前田さんは5~6年前まで、水の張った田んぼに苗箱を並べていました。今でも多くの米農家がこの方法で並べています。
しかし水を含んだ土は泥となり柔らかくなっているので、足をとられてしまい思うように動けません。
そこで改善を重ね、今では乾いた地面の上に置くことができるようになりました。昔に比べたら格段に作業の効率が上がっています。
前田さんの播種作業のこだわり
お米作りには、苗半作という言葉があります。
これは「苗の良し悪しで、その年の収量が左右される」という喩えです。それだけ、苗作りはお米の品質や収量に大きな影響を与えるんですね。
したがって播種作業は米作りにおいて最も重要であり、農家さんにとっても、とても緊張する作業なのです。
ミナミニシキを無農薬・無肥料で作っている前田さんは、以下3つのこだわりを持って播種作業に取り組んでいます。
①芽出しをせずに種籾を直接苗床にまく。
②不純物の混ざらない山土を使用する。
③ラブシートではなく鳥避け用のネットを使用する。
①芽出しをせずに種籾を直接苗床にまく。
芽出しとは、一定期間水に浸した種籾が芽を出すことです。一般的に米作では、めざしをした方が生育が揃うので常識となっています。
しかし、前田さんはこの芽出しをせず、種籾をそのまま直接土に播きます。
その理由は「均等に成長するよう人間が調整するのは、自然なことではないから」。
自然栽培は、自然の力で作物を育てる栽培方法です。前田さんは「種籾の発芽も自然の環境に託したい」と考えています。
②不純物の混ざらない山土を使用する。
播種作業では、苗を育てるために専用の育苗土を使用します。
一般的な栽培では、育苗土にも肥料を加えたり、薬剤で殺菌処理を施す場合がありますが、前田さんは育苗の段階から無農薬・無肥料に徹底するため、不純物の混ざらない山土を使用しています。
③ラブシートではなく鳥避け用のネットを使用する。
ラブシートとは、苗床を覆う不織布でできた白く(or黒い)柔らかいシートです。
ラブシートは遮光性・通気性に優れ、育苗時の保温・保湿維持に有用な資材です。
苗の生育を揃えることができるので多くの米農家が使用しています。
しかし前田さんは、鳥避けの網のメッシュを使用しています。よって、日光や雨にさらされやすくなり成長も遅くなりますが「なるべく自然の状態に近づける」と前田さんは言います。
播種作業に必要な、種籾・土・環境。この全てを、自然に任せているんですね。
最後にこちらの動画もぜひご参考ください。
まとめ
「早い梅雨入りは、明けるのも遅い」と言われています。長雨は農業にとって難事。特に米作においては品質や収量に影響します。
しかし前田さんは「自然に任せてミナミニシキを作っているので、気候変動が起きたとしても、苗自身が環境に順応して成長する」と考えています。
環境を変えるのではなく「その年に与えられた環境で苗自身がたくましく成長するよう、手助けをするのみ」だと。
例え厳しい環境に置かれたとしても、ありのままの自然に任せることで強くなる。わたしたち人間にも同じことが言えるのではないでしょうか。
今年は、約1600枚ほどの苗箱を準備いたしました。
環境変化が激しい昨今ですが、逞しく育ってほしいと願うばかりです。