こんにちは!自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
私たちは、自然栽培水田で自家採種した種籾を重要視しています。
今回は「自家採種を続けるとお米は変化してくるのか?」について熊本県玉名市で自然栽培米ミナミニシキの自家採種を続ける前田英之さんに伺いました。
稲は、生育環境に順応していくため遺伝情報を種に残していきます。まして、稲は生育中移動する事ができないためその場で生存する情報をより遺伝子に蓄積していく必要があります。
昔のミナミニシキと自家採種を30年続けてきた今のミナミニシキとの違いを前田さんはどう感じているのでしょうか。
前田さんが「どのような視点で自家採種をしているのか」もおもしろいです。記事の最後には動画もありますので、ぜひご覧ください。
<目次>
前田さんが自家採種を続けるミナミニシキとは?
お米が好きな方でも、ミナミニシキはあまり聞いたことがないかもしれません。
ミナミニシキは、1960年代に九州で生まれたお米です。系譜図を見てのとおり、ミナミニシキは現代品種の主流であるコシヒカリの遺伝子を含んでいません。食味としては、しっかりした食感、あっさりした食味が特徴となっています。
前田さんは、このミナミニシキの種を譲り受けてからずっと、自然栽培水田で自家採種を続けてきました。
今回は「自家採種を続けることでミナミニシキはどのように変化してきたのか」を前田さんに伺いました。
自家採種をするとお米は変化するのか?
まず一般知識として、自家採種をすると米ラベルにはミナミニシキと表記できません。これはミナミニシキに限らず、自家採種したお米の全てに当てはまります。
JAや種苗業者から購入したF1種(雑種第一代)のミナミニシキの場合のみ、ミナミニシキと表記できるのです。つまり、正式にミナミニシキと表記したければ、きちんと品種特定されたJAや種苗業者のミナミニシキの種籾を使用すべし!ということです。
では、自家採種をしている場合、米ラベルにはどう表記されるのか?
それは「未検査米」です。
私たちは自然栽培水田での自家採種を重要視しているので、米ラベルには「未検査米」と表記しています。
つまり、自家採種をすると表記を変えないといけないほど変化するのです。初めに、元となったお米がミナミニシキということなのです。
昔と今のミナミニシキはどう違うのか?
一般的に、どの自然栽培米においても、自家採種をすると徐々に味があっさりしてくる傾向にあります。
前田さんに「昔と今のミナミニシキに違いはありますか?」と聞くと、答えは「全く違う。元がミナミニシキということで全く違う」と仰いました。
移動できない稲などの植物は、その場で生き残るために、遺伝情報を種に残していきます。
農家さんの栽培方法により、その環境で生き抜いた遺伝情報が種に蓄積されていくのです。
前田さん曰く「最も違いを生むのは、田んぼに住む生物たちの影響」だと言います。
この視点が、前田さんらしいですね^^田んぼの微生物達が前田さんのミナミニシキを作り上げていると考えているのですね。
昔と今のミナミニシキは違うのか?
最後に:昔と今のミナミニシキは違うのか?
※写真:前田さんは冬の間に小麦を植えず田んぼの状態を維持している
前田さんは自家採種を続けたことで、昔と今のミナミニシキは全く違うと仰いました。
その最大の理由は「田んぼの多様な微生物層が影響しているため」でした。
前田さんは、多様な微生物の働きを重要視しているから、田んぼでは農薬を一切使用しないのです。
また、慣行栽培では、裏作に小麦を植える米農家さんもおられますが、前田さんは、稲と小麦では微生物層が違うという理由から、裏作には小麦を作らず、一年中、その場所をミナミニシキの田んぼとして使っています。
前田さんが重要視している事を感じて頂けましたでしょうか?
私たちの体自体が微生物との共生でできており、その働きによって生かされている事実から私たちの食べ物であるお米も微生物と共生する田んぼで育て、それを体に摂り入れていくことが大事だと考えています。
自然栽培水田での自家採種は種籾の段階から多様な微生物を重要視しており、個性のある独自のお米を作っているのです。