自然栽培米専門店ナチュラルスタイルの井田敦之です。
熊本県玉名市の米農家、前田英之さんは、無農薬・無肥料の自然栽培でミナミニシキを15年以上にわたり栽培してきました。
おそらく多くの方は、ミナミニシキをご存じないかと思います。
ミナミニシキは今から50年以上前に誕生したお米で、「食味は硬質であっさり」しています。現在、主流のコシヒカリ系のモチモチした食味のお米とは対極にある品種と言っても過言ではありません。
ミナミニシキは、40年ほど前までは熊本県で広く栽培されていました。ところが、コシヒカリが主流となり、現在はほとんど栽培農家はいません。しかし、前田さんをはじめ、ミナミニシキの生命力に注目した米農家によって現在もなお大切に種が紡がれています。
今回は、「今この時代になぜミナミニシキを栽培するのか?」前田さん本人に伺いました。
<目次>
ミナミニシキ栽培の第一人者である前田さん
前田さんは、今では、全面積ミナミニシキを栽培していますが、お米作りを始めた30年前は、九州で最も栽培されているヒノヒカリを栽培していました。
ヒノヒカリは、粘り・甘みを兼ね備えた定番品種で九州地方で最も人気のあるお米です。
前田さんは、15年前にある自然栽培米農家さんから「ミナミニシキを栽培しないか?」と声を掛けられたのですが、当時は非常に悩みました。なぜなら、誰もミナミニシキを栽培していなかったからです。お客様の反応も分からないのです。
ミナミニシキとは?
ミナミニシキは、1967年に宮崎で誕生したお米です。1974年に熊本県の奨励品種に登録されました。
ミナミニシキの親は、南海43号(トヨタマ)と秋晴。最大の特徴は、コシヒカリの血を引いていないので、食味は硬質であっさりしています。
栽培における特徴は、稲の病気であるいもち病にかかりにくいことと、晩生(おくて)で長稈(ちょうかん:背が高い)であることです。この特徴は昔の品種のお米と同じです。
ミナミニシキを栽培する人がいない理由
ミナミニシキは、1987年には熊本県のお米全体の53%をも占めていました。
しかし、コシヒカリ系のモチモチ感を望む消費者が増え、生産者が激減しました。一般の米農家さんにとって、あっさりのミナミニシキを栽培するメリットはほぼありません。
ミナミニシキを栽培する人は、よほどの理由がある米農家さんです。
一時期は姿を消したミナミニシキですが、熊本県の自然栽培米農家がミナミニシキの生命力の高さに着目し「現代に残したい日本人が食べるべきお米」と考え、自家採種で種籾を守ってきました。
その種を前田さんが受け継ぎ、今日まで自家採種をして守り続けているのです。
ミナミニシキに力を入れる最大の理由
前田さんは、全面積ミナミニシキを栽培していますが、一般的な米農家さんから見ると挑戦です。
現代の主流のコシヒカリとは、正反対の食味を特徴とするミナミニシキになぜそこまで力を入れることができるのか?
前田さんにその最大の理由を伺いました。
前田さんは、 このミナミニシキを1日2食(昼・夕)だけ食べていますが、 「2食でも充分パワーをもらえるお米」と仰っていました。
ミナミニシキは心にも影響を及ぼす?
インタビューの中で前田さんは「体の内面からパワーが湧き上がってくる」と語られていました。私は、長年、前田さんと触れていますが、前田さんは野生の感が鋭い方です。感覚を大事にして生きている方です。
前田さんがミナミニシキを作り続けいている理由は、食味とかではなく、食べた時に体の内面からパワーが出るのを自分自身で感じているからなのです。
前田さん曰く、健康のためには、氣や精神といった部分が整うことが大事だと。
コロナ禍が混迷を極める今、これからは、自分の健康は自分で管理していくことが必要な時代となりました。単なる栄養素の摂取でなく、食べ物本来が持つエネルギーも届けたいと前田さんはミナミニシキを無農薬・無肥料の自然栽培で育ててお届けしています。
まとめ
私は、これまで10年近く前田さんの自然栽培米ミナミニシキを全国に届けてきました。
当初は、お客様に「全然、モチモチしていない」「美味しくない」なんて言われましたが、現在では不思議と「このお米が一番美味しい」「パワーが違いますね」なんて言われます。
現代の美味しいとされているお米の基準(粘り・甘味重視)から見ると、美味しいお米からはかけ離れているはずなのですが^^。でも体が求めるような体になじむ感覚があるお米です。
食べ比べをしてみるとその違いがよく分かるでしょう。
前田さんがミナミニシキを作り続けている最大の理由「体の内側からパワーが湧いてくるお米」というのを少しでも共感して頂ける方は増えればと思っています。